名古屋地方裁判所 平成6年(わ)350号 判決 1994年9月29日
本店所在地
名古屋市中区栄三丁目二五番三七号
鈴木株式会社
(右代表者代表取締役 鈴木忠時)
本店所在地
名古屋市中区新栄二丁目三一番一七号
株式会社イエット
(右代表者代表取締役 鈴木忠時)
本籍
名古屋市熱田区大瀬子町五〇二番地
住居
同所五〇二番地の二
会社役員
鈴木忠時
昭和一九年五月二四日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宇川春彦、弁護人城正憲(私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人鈴木株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人株式会社イエットを罰金二〇〇〇万円に、被告人鈴木忠時を懲役二年にそれぞれ処する。
被告人鈴木忠時に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人鈴木株式会社(以下「被告会社鈴木」という。)は、肩書地に本店を置き、店舗改装工事の設計、施工及び請負等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人鈴木忠時(以下単に「被告人」という。)は被告会社鈴木の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社鈴木の業務に関し法人税を免れようと企て、平成元年五月一日から同二年四月三〇日までの事業年度における同社の実際所得金額が二億八〇一九万一一六九円であったにもかかわらず、立退料収入に関して架空の覚書を作成して預かり金であるかの如く仮装するなどしてその所得を秘匿した上、右事業年度における法人税の確定申告書を税務署長(所轄は、名古屋市中区三の丸三丁目三番二号名古屋中税務署長)に提出しないでその納期限である平成二年六月三〇日を徒過させ、もって不正の行為により被告会社鈴木の右事業年度における正規の法人税額一億一一一九万六四〇〇円を免れ
第二 被告人株式会社イエット(以下「被告会社イエット」という。)は、肩書地(平成三年一月ころから同五年四月二四日までの間は、沖縄県浦添市字宮城一五一〇番地マンションメルヘン二〇三号)に本店を置き、店舗改装工事の設計、施工及び請負等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人は被告会社イエットの代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社イエットの業務に関し法人税を免れようと企て、平成二年四月一六日から同三年三月三一日までの事業年度における同社の実際所得金額が一億九三〇二万九八四三円であったにもかかわらず、売上げ金額を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、平成三年五月三〇日、沖縄県浦添市宮城五丁目六番一二号所在の所轄北那覇税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が一四三七万〇七九〇円で納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社イエットの右事業年度における正規の法人税額七一六二万五八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
以下、括弧内の甲乙の番号は検察官の証拠請求番号を示す。
判示全部の事実について
一 被告人の公判供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(乙1、2)
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(乙3)
一 野田訓子の検察官に対する供述調書(甲1)
一 中村幸一の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲5)
判示第一の事実について
一 中村幸一(三通。甲2ないし4)及び尾畑孝(二通。甲8、9)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の証明書七通(甲10ないし13、16ないし18)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二七通(甲27ないし53)
一 登記官作成の商業登記簿謄本(甲25)
判示第二の事実について
一 中村幸一の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(甲6、7)
一 大蔵事務官作成の証明書三通(甲19ないし21)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書一七通(甲54ないし70)
一 登記官作成の商業登記簿謄本(甲26)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項(被告会社鈴木及び被告会社イエットについては、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告会社鈴木及び被告会社イエットについてはいずれも情状により同法一五九条二項を適用した金額の範囲内で、被告会社鈴木を罰金三〇〇〇万円に、被告会社イエットを罰金二〇〇〇万円にそれぞれ処することとし、被告人については所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処し、被告人に対し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する(求刑 被告会社鈴木に対し罰金三〇〇〇万円、被告会社イエットに対し罰金二〇〇〇万円、被告人に対し懲役二年)。
(裁判官 政岡克俊)